高温・多湿対策
温度調節が難しい、小型ハウスでの高温期栽培について
・地球温暖化は着実に進んでおり、昨今高温(25℃以上)は、厳寒期(12月中旬~1月下旬)を除き、いつでもなる可能性があります。
・特に冬は2月頃から急激に上昇する日があり、その際植物に大きなストレスをかけることになります。
・朝冷え⇒日中すごく暑い⇒夕方また冷えるという落差が大きい温度環境は、特に生長点に大きなストレスを与えます。
・植物の環境ストレスで、優先とする対策順は①温度、②水分、③栄養です。ともかく温度環境をまず見直しましょう。
・密閉された空間では、上部から空気は暖められ、下部に降りていく事になります。
温度は基本的に高いところから低いところへ移動しますので、ハウスの中はまるで
コタツのようになってしまいます。
・主な温度上昇の原因は、赤外線です。
外気温が低くても、光が強くなりはじめる2月ころから赤外線も強くなり、
ハウスの温度は上がりやすくなります。
・特に果菜類は、早い段階から生長点が高温域に常時あるようになり、
生育異常を引き起こしやすくなります。
人間と一緒で、低温時は「頭寒足熱」、高温時はなるべく血管(植物でいう維管束や根)を冷やす必要があります。まずはハウス上部から熱気を抜くこと、畝の温度はなるべく適温を目指す管理が必要です。
昨今の急変する環境にて発生しやすいトマトの生理障害や病害例
①葉緑部が硬く内側に巻き、生長点付近の葉もひどく萎縮する(ミイラ状態)
【原因】圃場内の高温乾燥が長く続き、体内の水分が極端に少ない状態が続いている
【対策】遮熱資材などの高温対策、タイベックマルチなどの利用、定期的な潅水
②弱くて小さい蕾(からの落花)
| 【原因】 花芽形成時に異常高温にあたる (特に温度が急上昇した際に発生しやすい) 生育前半に強勢で、追肥が遅れた摘果、整枝遅れなど
【対策】 高温対策(遮熱資材などの活用) エバホウソの散布(1段開花前後) 早めの液肥による追肥(トマト元気液肥)
生長点で分化中の果房に栄養が届かない 時期があった証拠。高温で焼け落ちることも。 |
③黄変して落花(焼け落ち)
【原因】花芽形成後の異常高温と乾燥
【対策】圃場内の温度を下げる、潅水時回数の増加 ※花も32℃以上で影響あり
④果皮にほくろの様な葉緑素の塊が出来る現象(フルーツボックス症状)
⑤葉に出る水泡症(葉こぶ症状)
【原因】・UVカットフィルムを屋根に使用しているハウスに特に発生が多い
・屋根部分が古く汚れたガラス温室やビニルハウスも発生(日照不足で助長される?)
・夜間の雨天後、朝にモヤや霧が出る(日照少なく高湿度条件になった)と出やすい
※UVを強くカットする事と、本症状との因果関係はあるようですが解明されていません。
【対策】・UVを強くカットするような資材を屋根に使用しない、日照不足が助長される環境にしない
・朝に霧が出る、圃場にモヤが見えるなどは、少々温度が下がっていても強制換気
・発生後は薬散などをせず少しの間放置、乾燥させて細胞瘤を固める
・「葉の気孔が開きにくい条件」を極力避ける
・「葉先枯れに強い」品種はやや出やすい傾向があるので注意する
最近目にするようになってきた症状だが、根本的な部分の原因は今だ不明。
高湿度条件に発生しやすく、上記の通り、UVがカットされる(日照不足)環境では発生増。
降雨後に湿度が100%近くになるのを避けるため、少し間をあけて硬くなるのを待つとよい。
| また、幼苗の段階から発生するので、育苗床には特にUVカット環境を作らないほうが無難。
←薬散により焼けた水泡症のこぶ
液肥(葉面散布剤)でも潰れるほど柔らかい細胞の塊であるため注意。(特に育苗時は注意) カビがつきやすくなるかもしれず、こうなったら薬散。 |
⑥ホウ素欠乏による生長点や果房の異常(芯どまり、二股化など)
⑦黄化葉巻病(TYLCV)
冬季ハウス暖房
無動力換気扇を設置する場合、4-5℃程度低くして管理しても低温多湿時に多く発生する細菌性病害がほとんど発生しないという事例から冬季暖房費を削減できる可能性がございます!
夏ハウス温度維持
気温高まる夏にはビニールハウスだけでは自らの温度維持が不可能です。各種冷温装置を稼動するなど経済的追加負担が予想されますが、無動力換気扇を設置すればハウス環境により異なりますが外部の温度より内部温度が4~5℃程度低くなる場合も有り、植物が感じる体感温度で6~7℃程度低くなる可能性があります。10~30日ほどの収穫期間延長が実現できる可能性がございます。
栽培施設(グリーンハウス)の高温多湿の課題
■高温時に於ける降温調節
夏季高温時の降温調節は極めて関心の高い課題です。
温室の降温調節は一般的には、遮光と換気あるいは冷房によって行われます。
遮光および換気のみでは室内気温を外気温以下に降下させることは基本的に不可能です。そこで冷房法の導入も考えられますが、コスト高となり簡単にはいきません。
高温障害によるトマト
■湿度管理
温室内では作物からの蒸散及び土壌表面からの蒸発があるため、室内湿度は、一般的に室外空気よりも高いです。
温度と湿度は作物にとって最も適した生育条件に、また室内で作業する作業環境に大きく影響します。
空動扇による課題克服の可能性
農業施設に於ける換気の目的は、温度調節、湿度調節、および新鮮外気の供給です。
空動扇による換気の有効性は室内気温と湿度をできる限り設定値に近づけ、また新鮮外気により室内において光合成で不足するCO2を導入します。合わせて換気による室内空気の流動化をうながし、作物群落内および作物体のガス交換を促進します。
■高温時に於ける降温調節
空動扇は0℃~40℃までの範囲で開閉板の開閉調節ができます。
空動扇には形状記憶合金スプリングが付いており、温室内の気温に応じた温度変化と共にスプリングが収縮し開閉板を巻き上げます。弁が開閉すると空気の上昇により外部へと換気が開始され、空動扇のファンが回転し、よりスピーディーな換気を行います。室内温度が低下すると開閉板は自動で閉じ換気は中止されます。
■湿度管理
空動扇の換気が開始される事で水分を多く含んだ暖かい空気が抜け施設内の健全な湿度が保たれます。電気換気扇等では土壌水分や作物から余計な水分まで奪うケースがありますが、換気が行われる事で、より外気との温度差を防ぎます。また、外気との温度差によって生じた結露は朝一番の光合成にとっても問題となりますので作業労務軽減にも繋がります。